「深刻化する保育士不足」 NHKクローズアップ現代


深刻化する保育士不足 〜“待機児童ゼロ”への壁〜

深刻化する保育士不足 ~“待機児童ゼロ”への壁~ (テレビ番組のテキスト化情報)
保育士争奪戦のいま(クローズアップ現代、スタッフの部屋から)

 

 「2年で20万人分、5年で40万人分の保育の受け皿を確保する。」政府の「待機児童解消加速化プラン」。いち早く“ゼロ宣言”をした横浜をモデルに待機児童解消を図る。しかし、保育の「ハコ」は確保できても、不足するのが保育士。新たに7万4千人が必要になる。既に激しい争奪戦が始まり、保育士を大量に引き抜かれた園や、預かる子どもを制限せざるを得ない園も現れている。保育士不足を加速させているのが、高い離職率。保育士の資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」は68万人に上る。食物アレルギーや乳幼児突然死症候群への対策、保護者からの要望への対応など、保育現場の変化が拍車をかける。景気低迷や、少子高齢化による労働力不足が懸念される中、女性が出産後も働ける環境が必要な日本。その鍵を握る「待機児童問題」をどうしたら解決できるのか考える。(2013/7/24・NHKクローズアップ現代)

 

2013年7月24日のNHKクローズアップ現代が取り上げた「保育士不足」問題です。サイトに掲載された文章を読むだけでも深刻さが伝わってきます。番組に一貫して流れているのは、「母親が働くには保育所が必要」というメッセージでした。預けられている子供のことについては何の言及もありませんでした。子供への視点が欠けています。

保育所を支える保育士がいない。保育所養成所を卒業しても半数の人が保育の仕事に就かない。過去に保育士として仕事に就いていた人も、以前の保育所とは様変わりし、負担感が増大した仕事には戻らないといいます。

なぜ、そうなったのでしょうか?

「保育士の給料が上げられない仕組み」

番組の中で取材した記者が、「保育士の給料を上げたくても、簡単には上げられない仕組みになっている」と言及しています。そう、保育所には「保育単価制度」というものがあり、保育所は国が定めた単価で運営するように決められています。

その単価の構成は、人件費、事業費、事務費などとなっており、基本的には保育に全て使われ、余剰金は残さないという仕組みです。ですから、定員の大きい保育所の単価はスケールメリットがあるということで、定員の小さい保育所の単価と比べて低く設定されます。

一般に、お商売で言えば、商品をたくさん売った所は収益が増えるはずです。保育園も、保育園児が増えれば、当然保育園の収入が増えるはずです。ところが、以上のように単価が低く設定され、調整されてしまいますので、1年間の運営が行われた後には、お金が残らないという仕組みにされてしまいます。

これが、NHK記者のいう、「保育士の給料を簡単には上げられない仕組み」なのです。つまり、国で充当すべき人件費が決められているので、認可保育所は国の枠を越えて保育士の給料を上げることは難しいのです。

こうした状況にもかかわらず、大資本の株式会社との競争が仕掛けられましたから、弱小の認可保育所はたまりません。競争しようにも、基本的には打つ手がないのです。

大資本の株式会社は、資本を自由に使うことができますので、「保育士を集める!」といったことが必要になれば、そこに資本を一気に投じて、保育士養成所や大学の保育資格を取得する予定の人達を青田刈りしてしまいます。

株式会社の中には、海外研修を売り物にして新人保育士を集めます。一度に200人も、400人も採用する株式会社が出てきました。人事担当者によって地方の養成所を総なめにし、保育士を刈り集めてしまいますので、地方の保育所でも保育士不足が深刻になってしまったという話です。

保育士が不足すれば、他の保育園から引き抜く強引なやり方。「既に激しい争奪戦が始まり、保育士を大量に引き抜かれた園や、預かる子どもを制限せざるを得ない園も現れている。」とのことです。

 

「負担が増した保育士の仕事」

加えて、保育士には、長時間保育、子供たちの異変、アレルギー対策、保護者のクレーム対策、集団感染、SUDSなど、対応することが増え、気の抜くことができないような仕事状況が当たり前になりました。その結果、この仕事には就きたくないという人が増えたのです。

これまで、国は8時間保育を11時間開所などとし、単価も上げずに3時間も保育時間を増やしたり、病気の時も預かれ、どんな残業にも対応せよと延長保育を推進したり、感染症などが出れば、保育園の不始末として厳しく取り調べ、全てのしわ寄せを保育士に押しつけてきました。

保育士を企業の下請けにすれば、母親は働くことができる、という単純な考えで、あまり文句を言わない我慢強い保育士たちに、いろいろな歪みを押しつけてきました。

その結果、保育士になり手がいなくなった。ということです。これは「保育士のストライキ」です。

この問題は、国が保育に関する基本的な考え方を改めない限り解決の方向は見いだせません。残念ながら、いくら保育所をつくっても、保育士がいないことになります。

 

呆れた国の新保育施策「ミニ保育所」

こうした状況に、国の保育施策担当者は、次のようななりふり構わない施策を展開してきました。

「ミニ保育所」新設

待機児童解消へ新認可基準・保育士配置規制を緩和

「ビルの空きスペースなどで開く「小規模保育(ミニ保育所)」を新設。全ての職員が保育士の資格を持たない施設でも国費で支援できるようにする。機動的に増やせるミニ保育所を待機児童の切り札と位置付け、40万人分の受け皿作りを急ぐ。」

「従来の認可保育所では全職員が保育士資格を持っていることを義務づけていた。今回の認可基準案ではこの規制を大幅に緩和し、職員の半分しか保育士がいなくても認可対象とすることにした。」

こんなことをすれば、質の低い、資格の無い保育士が激増することは目に見えています。園庭もなく、狭い部屋に押し込められ、一日11時間、13時間も保育所で生活する。加えて対応する保育士の質が落ちていく。子供たちに影響が出ないはずはありません。日本の未来を担う子供たちが、今後どんな人間に育っていくか。既に、ニートや引きこもりなど、子供たちの異変はいたる所でしてきされてきました。これらの子供たちの異変は乳幼児期における保育が強く影響しています。

子供の健全な発達を保障すべき国が、待機児童解消を謳い文句に、国の最低基準である保育士の配置基準までも、一気に緩めてしまいました。どうして、こんなことが許されるのでしょうか。だれか止めてくれないのでしょうか。

国が、なりふり構わない施策で保育施設を増やしても、保育士の大変な仕事が改善されない限り、保育士は増えません。その増えない保育士を見込んで、資格を持たない人を保育に就かせる。これは、いくらなんでも「禁じ手」だと思います。これは、「してはいけないこと」です。

待機児童の解消が、さまざまな歪みを日本の社会に生んでいくことを理解しない国の保育施策担当者。この人達は、本当に保育施策を担当するに相応しい人達なのでしょうか。

 皆さん、ぜひ考えてみて下さい。


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