情動と記憶(一時保育の問題性)


脳の学習力(S.J.ブレイクモア・U.フリス著・岩波現代文庫 乾敏郎・山下博志・由田千里訳)には次のように記してある。

「情動にはしばしば記憶が関係し、記憶はしばしば情動を伴う。情動的なでき事、とくにネガティブな情動を伴う出来事は、中立的なものよりもよく記憶される。動物および人間での研究から、脳の情動系(大脳辺縁系ともよばれる)の重要な部分である扁桃体が、恐れや悲しみを引き起こす出来事と関係することで強められた、長期記憶の形成に関与していることが示されている。」(P313〜P314)

この一文を読んだとき、保育園の「一時保育」の問題性について強く感じた。

保育園に入園するとき、多くの保育園は「慣らし保育」を実施するが、世界一大好きなお母さんと離ればなれになることの不安感や恐怖感について、それを和らげることを主目的としている。

この慣らし保育でさえ、子供の心に影響を与えないかを心配する。つまり、このネガティブな体験が子供の長期記憶として刻まれてはしまわないかという心配は、私の心から消えてなくならない。

その内、子供は、あきらめと他にすがりようがないという状況を感じてか、お母さんの代替えとして、心優しい保育士を子供の側から選んでいく。

人生理不尽なことはたくさんあり、そうしたことにも慣れていかなくてはならないことは大切な事だとは承知するが、それでも子供の脳が敏感で柔らかいうちに、まだ言葉が獲得できていないうちに、あまり不安を感じさせるような出来事は、経験させない方がよいということは強く思うのである。

こうした不安体験が幼い子供の心に刻まれ、やがて思春期に出てくる。これは、長期記憶とネガティブ体験との関係からすれば、容易に推察できるのであるが、若者の自信のなさ、小学校でのさまざまな子供問題などを考えるとき、私にはどうも、012歳児期のおける「不安体験」との関連が強く感じられてしまう。つまり、保育園はそのことを重く受けとめなくてはいけないのではないかと考えている。

保育園の「慣らし保育」でさえ問題があるのに、その日に保育園に連れて来て、すぐに保育園に子供を長時間預けるという「一時保育」について、なぜ保育学者は異議を唱えてくれないのだろうか。驚くことに、この「一時保育」は保育園の主任保育士加算が認められるための4つある特別保育項目の一つであり、国が強く推進している事業である。

これは、「育児放棄」や「児童虐待」に対する対処策として考えられているようだが、保育現場では親のレジャーや買い物など、本来の趣旨からは外れた利用が許されるようになっていると聞いた。この「一時保育」自体が、子供の心に悪い影響を与えているとしたら、これは直ちに考え直していただかなくてはいけないと思う。

現場の声を聞くと、多くの保育士が「一時保育」の問題性を訴えている。泣きっぱなしの子供に何の対応もできない状況。只でさえ、基準以上の子供たちを長時間にわたり集団で保育している上に、泣きっぱなしの一時保育の子がクラスに入ってくる。これでは、保育士は息切れもし、すり切れてもしまうのである。

学者先生、早く調査して、問題を国に指摘して下さい。

 


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